*羊羹の裏*
かおる


渋茶と一緒に供する三時のおやつ

羊羹が出てくるとなんとなく胸が痛んだ

歯の裏に引っ付いてくる粘着性
苦みを感じてしまう程の甘さ
綿々と続く伝統の重さ
洋菓子が醸し出す空気たっぷりの軽さととろける感触の正反対にあるもの
鶴の恩返し的勤勉さ
籠の鳥

羊羹を齧ると
をんなの流した血の味がする

恋だ愛だって言ったって
結婚はやっぱし、
練って練って糸をひいちゃった家と言う羊羹の裏までも
嬉々として食べ尽くす事だと思う
二の足を踏んじゃったら、心が風邪引くよ

あたしはベビーシューを摘むのが性に合っている
そんな気ままな自由が残っている幸せを噛み締めながら
香り高い紅茶にたっぷりのミルクを入れる


自由詩 *羊羹の裏* Copyright かおる 2006-09-17 20:56:56
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