背中の背中に潤う寝息
砂木

きりきりと張られた
暗い夜道

向かう音のない雨
片側だけで 聴く耳
もうひとつの行方 

舗道を流れる
外灯の明りに
寄りすがり
つぶてに 落とされた 蛾

パタパタと 動かす羽
穏やかに照らされても
少しづつ 
雨の川に なくす

紫に色づきはじめた すすき
うつむく 風

障子に 少し 朝
消えかけてる 体

隣りで寝ている夫が
ふと 起き上がる

背中越しに 
ばさり と
布団がかけられた

自分も 布団をかぶって また眠る

遮断機がおりる
蛾の沈む雨が 過ぎていく

すすきが 穂をあげる

チクタクと時計の音
段々 まぶしい日差し

渇いた背中
潤したのは

変わらない あなた










自由詩 背中の背中に潤う寝息 Copyright 砂木 2006-09-17 08:36:20
notebook Home 戻る  過去 未来