午前五時の窓辺
狩心

耐えがたい痛みで目を覚ます午前五時
薄暗い安らぎを噛みしめる窓辺
なみ だ;
押し寄せてくるのは
    なみ だ;
    遥か彼方の向こう側の さらに裏側から
    押し寄せてくるのは火花だ 何かと何かの衝突音だ
    太陽の核融合反応から始まった 燃え盛る生命の炎だ
    お互いの差異をすり減らし合った 虚構の思想家たちの なみ だ;
< 区画化された壮大なパズルの大地に 人工の苗木が規則正しく植林されていく >
   地球が見えない ---- 幽閉された人々の叫びだ
             腐葉土を撒く 畑が再生するように 腐葉土を撒く
             それは死者たちの屍から発生する
             なみ だ;
             降り積もる太陽の
                なみ だ;
         秒針が小刻みに震えている
         午前六時
         幽霊製造機が動き始める
         また一人 また一人と 形を失っていく
         魂が知識で埋め尽くされていき
         我を失ったエネルギー体の鎮魂歌ばかりが響く
         午前七時
         すっかり 辺りは明るくなり
         小動物たちが建物の陰に隠れ始める
         もはや 秒針が震える音さえも聞こえない 
         演説と爆撃音が交互に鳴り響く最中   
名称不在の測量機が動き始める
測りとられる あなたの魂は1立方メートル
       あなたの魂は1平方メートル
       あなたの魂は使い物にならない・・・・・・
       測りとられたくない魂は 物理法則を超え
       多次元に「サヨナラ」を告げ 死者として 一次元へ還元されていく
論理武装を持たない者たちは
今なお 魔女狩りが現存している事を知っている・・・・・・
ちょうど一年前の午前五時 ---- 新しい生命が誕生した
               脳挫傷 さらには 脊髄を大幅に損傷しており
               「立ち上がれ!同志たちよ!」の声も出ない赤子
               体も動かせず 目を開ける事も出来ず
               言葉を覚える事もなく 意味の世界を知らない・・・・・・
               眠ったまま 
    水と太陽のエネルギー 細胞分裂を繰り返す不定形なアメーバ
それは、何の根拠もなく「生きたい」と願う長男の悲痛な叫びと温かい なみ だ;
    手を握りしめる力はどんな思想家よりも強く
    何よりも「実感」に触れていたいと願う 宇宙の「かけら」だ

思想/死相
亡くした親に似た姿を持ち、優しい素振りで私たちの中に入り込んでくる・・・・・・


自由詩 午前五時の窓辺 Copyright 狩心 2006-09-15 10:59:14
notebook Home