もう一つの理由
狸亭


そこにプールがあって曙と泳げる。
肥満体おどらせて水飛沫をあげる。

可愛くてたまらないまるで嘘のような
滑らかな褐色の肌をしたオンナ。

残された人間の時間感じながら
オトコの命の果ての甘い舞台裏。

北の田舎を訪ねれば村人の笑み。
のんびりとニワトリが羽ばたく草の海。

牛がたった二匹そこで雑草を食む。
底抜けに晴れた青空の白昼夢。

竹筒に押込まれた糯米も甘い。
車座にかさなりあって隣付き合い。

耳慣れない言葉が飛び交うその声
なんともしきりに懐かしいアジアの末。

あの遠い遠い故郷の幼い頃。
もう忘れていた大切なこころの色。

この辺り細やかな小屋を建ていっそ
隠遁してしまおうか醤油と味噌

さえ持って来れば市場には野菜、魚
鶏肉など新鮮で廉い色々な

天然自然の食材が溢れてる。
晴耕雨読してやがて土に還る。

日々押寄せる情報の波を逃れ
あらゆる係累を断ち切り時しもあれ

妄想は限り無く湧き彷徨い歩き
都会の喧騒に戻ってからの日記。

そこにプールがあって黄昏と泳げる。
わがココロとカラダにタマシイを繋げる。

とても懐かしい母の胎内のような
柔らかな安息を齎すこのオンナ。

残された人間の時間感じながら
オトコの命の果ての甘い舞台裏。

19981029


自由詩 もう一つの理由 Copyright 狸亭 2004-03-11 07:39:18
notebook Home 戻る