初秋
かや
ふっと目覚めたら八時前で
外はどっぷり暗い
あぁ夕飯の後にうとうとしたんだなって
隣見たらあんたも眠っていて
早起きして疲れたんだろうね
親指で
いつもの頬をそっと撫でた
新しい部屋は
日当たりがよくって窓も二つ
両方開けたら風と虫の声が
さらさら流れてきた
向かいの家の二階の
窓ガラスに綺麗な満月が映っていて
星のない空見上げたけど
本物は見えなかったな
しばらく遠くの光を見てた
もう二人になって
何度目の秋だっけね
あたしは少し大人になって
あんたは少し子どもになった
数えようとしたら
お皿洗う手が止まってしまって
照れくさくってやめた
それでもきっとさ
あんたは言うよね
それはとても幸せなことだ
手のひらに洗剤の
清潔な香りが残っている
それはとても幸せなことだ
それはとても幸せなことだ