小世界
船田 仰



この時期ありがちな滞った美しさを切り裂け
オレンジを手に入れた飛行機ぐもは空のなかで最強だ
低くちかい真綿みたいな空
そんなのをいっぺんで音楽にさせることができる

距離あるね
自転する星にはそんなの関係ない
ごめんよりありがとうより
のこりの今日をどうすごすか話し合おう
いたいことを想うより
明日を今日に加えるために
飛行機ぐもが交差するように地表を移動しよう

こうかはてきめんで君はぼくを失いたくなって
映画みたいに最後にひとつだなんていえなくてただただ歩き出すしかなくって
結末としてなってないじゃないか
だからのこりの今日のために
あんたを突き放す
そうさせてくれ

靴のなかで完全にこすれあうゆびとゆび
すれてゆく笑顔でバイバイをいおう
あいしてるといおう
ゆうぐれのうちに


気付いたとたんに寒くなって
匂いだけ残して
あんたは君から残像になる
目の前を
残像の君があんたとなって
ちっぽけなぼくが晴れるのを待つ


もうそれだけ





自由詩 小世界 Copyright 船田 仰 2004-03-10 21:14:04
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