顔 その1
恋月 ぴの

あひる


醜いあひるの子は
永遠に醜いままだ
白鳥になんてなれない
なのに誰もそれを口に出したりは


しない





ねこ


ねこのかお
よく見なくても、すぐ判る
飼いねこのかお
野良ねこのかお
なのに誰もそれを口に出したりは


しない





モディリアーニ


モディリアーニの描く女性の顔が
あのように捩れているのは
眼の病を患い拉げてしまったから
そう考えるのは、なんだか寂しい気がする
人の顔
目があって
鼻があって
口がある
横っちょには耳もある
モディリアーニの描く女性の眼は
宝石のような淡い海色
ねこの目のようで
魂のぬけがら
永遠に閉ざされた思いの滴は
傾げた顔の向こう側
なのに誰もそれを口に出したりは


しない


自由詩 顔 その1 Copyright 恋月 ぴの 2006-09-10 19:04:14
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
日記のようなことばたち