曇り空
たもつ


「生き春巻」です
店員は言った
メニューを見直す
確かに「生き春巻」とある
生き春巻は時々皿の上でもぞもぞ動くが
その間も気持ちを見透かすかのように
目のようなものでこちらを睨み続けている
どうやって食べるのか尋ねると
私の親友なものですから
泣きそうな顔で店員が答える
言葉で出来た翼のようなものがあったので
鳥、と呼ぶと
生き春巻は開け放たれた窓から
外に飛んで行ってしまった
曇った空は
誰かの作り話のように美しかった



自由詩 曇り空 Copyright たもつ 2006-09-10 12:52:20
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