遠くにいる
霜天

空に、鳥の滑空していく
きん、とした音が響いている
いつも何かが足りない
青いだけの視界を補うように
手のひらはいつも、上を向いている


いつも着地する景色には
逃げ出してしまう色がある
やっとたどり着いた空なのに
雨には、凍えた両手を合わせるだけで
いつも、雲も無い


空を斜めに切り裂くように
飛んでいった蝶々の背中
捕まえてみせたその手で
いつか、泣いたことがある
指先から限りなく
ゼロに近い音が漏れる


 僕から逃げていくものものを
 受け止めているのは誰だろう
 歩道の縁をなぞるように歩けば
 僕はいつでも、僕のままだった


思う時がある
足りない景色が見たかった
傷跡を何度も傷つけるような
足跡をもう一度踏締めて
空に、鳥の滑空していく
きん、とした音が響いている
着地するその夢だけは
いつも遠くにいる

夏だった


自由詩 遠くにいる Copyright 霜天 2006-09-06 01:21:53
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