震える耳
A道化






午後が
千枚のツツクホウシで耳に触れる
この、耳、
もっと奥へと誘う迷路を装って実は
透明のものにたやすく沿う為の形状の
この耳が、悦びに震える、嗚呼、午後よ、
午後よ、あなたをふと
夏の終わりと呼んでしまった
それを真っ先に聞き取りながら
耳は、もう、一枚ずつ
ツクツクホウシを喪失しはじめているのだね、ほら、
ツツクホウシが耳に沿って喪われてゆくこと
ねえどうしてかしら、震える、耳から順に
肌寒さに似てゆくよ


2006.9.3.


自由詩 震える耳 Copyright A道化 2006-09-03 23:42:55
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