かわいい虫たち
壺内モモ子

散歩をしていたら
クヌギの木にとまっているカブトムシに会いました
カブトムシは優しくほほえんで
「こんにちは」と挨拶をしました
まるで燕尾服を着たジェントルマンのようでした

やがて
クワガタムシがやってきました
クワガタムシは元気に
「よう」と挨拶をしました
まるで学ラン姿の男子高校生のようでした

かっこいいカブトムシとクワガタムシだけど
木の樹液を吸う姿がかわいらしくて
ちょっとドキドキしました

わたしは木陰のベンチに座って本を読みました
さっきまで樹液を吸っていた
カブトムシとクワガタムシもやってきて
わたしの肩の上に乗り
一緒に本を読みました
とてもしあわせでした

本を読んでいたら
うとうとしてきて
つい寝てしまいました
目が覚めると
わたしの肩の上にいた
カブトムシもクワガタムシもいませんでした

開いていた本の上で
ゴキブリが
一生懸命、文字を読んでいました

びっくりして本を閉じると
ゴキブリは
挟まれる前に
ぶーん
と音を立てて
ちょっと恥ずかしそうに
ちょっと申し訳なさそうに
飛んでいくのでした

かわいそうなことをしたなと反省し
わたしはまた歩きはじめました


自由詩 かわいい虫たち Copyright 壺内モモ子 2006-09-02 03:02:48
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