小さな湖のほとりで
ささやま ひろ

「もうすぐお別れです」

夏の妖精があいさつに来た

金色に輝いていた姿は
うすく半透明になっている
それでも確かな輝きを放ちながら
小さな湖のほとりへと帰っていく


素敵な夏をありがとう
また来年


約300年もの間
私は季節の変わり目に
こうして妖精たちとコトバを交わしてきた

ほんの小さな苗木だった私も
今では大地にしっかりと根を張っている
きっと私にも寿命があるだろう

妖精たちのさよならに淋しさは感じない
なぜなら彼らはまったくもって「生」に満ちているから

小さな湖のほとりには
妖精たちの城がある

夏の妖精は
光の余韻を残しながら
静かに消えていく

やがて秋の妖精へと生まれ変わるのだ

まぶしい輝きとともに


自由詩 小さな湖のほとりで Copyright ささやま ひろ 2006-08-30 19:13:57
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