透明な箱
ふるる

生まれながらにして入れられた
透明な箱
透明なので見えない
けれど箱
外には出られない

不思議なことに
透明な箱は手の中にあると錯覚される
錯覚されたまま
自在に扱っていると思われる
思われたまま
それで愛し合ったり傷つけあったりする

透明な箱は手の中にはあらず
誰もその外に出られない

不思議なことに
透明な箱があることに気づく者がいる
そこに閉じ込められていることに
その外の世界が気になる
決して行けはしないけれど

透明な箱に気づいた者は
その外に目を凝らす
目を凝らしても何も見えないが
外があることは分かる
外のこと
そのことを
憶測し
記録する

そこは美しいだろうか
恐ろしいだろうか
儚いだろうか
確固たるものだろうか

わからないけれど
わからないまま
詩人は透明な箱で透明な箱の外を記録する

読者は一時
忘れていた自らを捕らえる透明な箱と
その外の世界のことを
おもう
喜ぶ
嘆く
ほっとする
ぞっとする

透明な箱
その箱を決して
破ってはいけない
外に出ようとしてもいけない

そうすれば必ず
大切な何かを
代償として

失うだろう・・・・・・・・


未詩・独白 透明な箱 Copyright ふるる 2006-08-27 23:02:04
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