ちくわちくわぶ
美味
スクランブル交差点を
行き交うちくわの中に
ぽつり
ちくわぶが混じっていた
バッタものだよ
言われて初めて気がついた
NIKOのロゴTシャツ
が吸った汗の染みへの愛着
そんな正解のない
この世界で
どのくらいの
本物があるのだろう
仮に
あのちくわぶが
ちくわのバッタものだと
傲慢にも言えるのか
自分は本物だと
思えるのか
ちくわの群れに
流されて
埋もれて
消えていったちくわぶの
気配が風になる
お前のこと
好きじゃないけど
嫌いでもなかったよ
帰り道
駅前の小さい八百屋で
牛蒡を数本買った
ぽっかりと空いた心の隙間に
何でもいいから
詰めておきたかった