歩く花
服部 剛

夜になってから急に 
庭の倉庫に首を突っ込み 
懐かしい教科書を次から次へと処分して 
家の中に戻ったら 
腕中足中蚊に刺されていた 

それを見た母ちゃんは、言った。 
「あんたはつよいねぇ・・・」

心の中で僕は、呟いた。
「つよかぁねえよ・・・」 


( 紐で結ばれた国語の教科書の表紙は、
( 嬉しそうに花開いた向日葵ひまわりであった。


  * 


ひとすじの道を歩いていた。 
ただ歩くしかなかった。 

時に気まぐれな 
突風に倒されても、
通り雨にずぶ濡れても、 
やがて空の雲間から射す光を注がれて 
へなった茎は不思議な力で起き上がり
ふたたび、ひとすじの道を、
いつものように歩き出していた。 

( 根っこなど、とうの昔に抜けたのだ・・・ 

今日も根無しの向日葵は 
無数の根っこを足にして道の上を這ってゆく  

口笛を吹くように太陽の花を揺らして
猫背な茎で、ゆらゆらと、
何処までも続く、風まかせの道を。 








自由詩 歩く花 Copyright 服部 剛 2006-08-27 13:03:14
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