こんなにも単純に美しい世界が
霜天

薄暮れて
眠り続けた一日が
黄昏に、朝と夜とを迷う視界に
君の小さい、窓辺に向かう後ろ姿が


棚引いて


まだ平原には届かないから
打ち寄せる波がこちら側を削っていくのを
ただ黙って見送っている
全てを注ぎ終えると
君はからっぽになれる
まだ遠くへ行く前に
それだけは、待っていて


緑色の空が
こんなにも綺麗だったなんて
寝言のようにつぶやくと
沈んでいく
腕の中へ
沈んでいく



崩れていく部屋
終わる時代
滑るように階段を下りて
僕はまた出掛ける
時間通りに電車は来る
理由を深く考えることなく
朝はやってきて
人は遠くなれる
いなくなった指先が
とても、優しい
誰もいない昼下がり
揺れるカーテンの部屋は、不明
君が帰ってくるまでにも
こんなにも単純に美しい世界が


目を閉じて黙って
僕らは気付けない
人は遠くなったまま
捨てたものを探してしまう
夕暮れに目覚めた日
ただいまと言うのを
忘れてしまって


自由詩 こんなにも単純に美しい世界が Copyright 霜天 2006-08-27 02:11:00
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