「タガタメ」 〜皮肉たっぷりのニュースが見たい
クリ

●たとえばこんなニュース。重大な事件でも、あなたの生命に直接、今すぐ関わる事件ではないが、ひどく気になって考えてしまった。
「さいたま市の中学1年の男子が教室に日本刀を持ち込み、同級生を脅した。その際脅された生徒は手に怪我をした。…」
そして最後に付け足しのように、「脅した生徒は、怪我をさせた生徒にいじめを受けていたということだ」と。
一見すると、日本刀の男の子に対して「本当に今の子供は何をしでかすか分からない。殺す気だったなんて少しおかしいのではないか」
そんな意見も出そう。でもよく考えてみるとそれはそれは深いはずだ。
まあ、ここの人たちはだいたい理解が及ぶはずだけれど、男の子は、日本刀を持ってくるまでに、
苦しんで苦しんで、もう最後はこれしかないと、悩んだはずなのだ。加害者であり被害者なのだ。ある意味。
「タガタメ」なんですよ。ミスチルの。
報道は、「事実を伝える」ことが使命とされる。「事実を伝える」ことの意味を論議すると、はまってしまうし、
今は関係ないので曖昧にしておく。問題は、「事実を伝えるだけでいいのか?」ということだ。
だって現代人はまだ、報道を鵜呑みにすることしかできない人が非常に多いと思うのだ。
欧米の報道は、最近のアメリカの報道の腐敗は別として、かなり色眼鏡で書かれ/放送される。
公的な機関の批判、社会的な問題に関する意見を述べる。事実を伝えるだけでは終わらない。
それは報道機関が競争しているからだ。ただのニュースではインパクトを与えられず、パイを取れない。
理由は別にしてその姿勢は正しいと思う。立場は右でも左でも自由だ。ただし批判精神を持たずに垂れ流しだけはしないでほしい。
政治については、右寄り左寄りに関わらず、現政権を批判しなければ意味がないのだ。
見る側、読む側もそれに応じたレベルの姿勢が必要だと、思う。知識がなければ生きていけない、
報道機関の思想的な背景もわきまえての上で知らなければいけない。
報道は、それ自体をも啓蒙する役割を持たなければいけない。
「私たちのニュースを吟味するには知識が必要です。私たちの意見にはある思想が反映されています」と。

●もうひとつこんなニュース。これは最初に深夜のネットで知った。翌朝の一面トップになるとも思った。
しかしご存知のとおりならなかった。なんと「第三社会面」の小さな記事で済ませられてしまった。

     「薄笑いの首相」 大江氏、特派員協会で首相答弁を批判

 ノーベル賞作家大江健三郎さん(69)が5日、日本外国特派員協会(東京)で講演し、平和憲法に反する、現在の「戦争への運動」を批判し、小泉首相の国会答弁は質問に答えておらず、表情から「薄笑いの首相」として名を残すのではないかと皮肉った。
 大江さんはまず「日本人の自己表現の文体」と題して、「最近の日本人は、テレビの影響で会話中心の思考が多く論理が弱くなった。その延長で小泉首相の内容をともなわない言葉が人気を得た。靖国参拝などの問題も、国内での口頭表現が、国際的にも通じると判断を誤ったのではないか。書き言葉の論理性の復活が必要だ」と指摘した。
 質疑では、現在が戦争と平和の分岐点にあると強調し、かつて日本にあった「平和の文化」と「平和の運動」の一致を再現し、平和憲法改定につながる教育基本法改定の動きに反対する必要性を語った。 (以上、朝日コム)

痛烈だ。「ば〜か」と言ってるのと変わらない。
そして二つ目の段落で言われていることこそ、上で僕が書いたことの同義語になっている。
大江さんがキャスターやったら、滑舌悪くて人気ないだろが、こういう批判的なニュース番組をやったら、受けると思う。
久米宏はもう、ニュースステーションのこと投げてるし。誰かやってくれないかなー。
公正な報道なんてありえないし、たっぷりの色付けされたニュースが見たい。あっ、2chみたいなのはごめん、虫酸が走る。

                                                Kuri, Kipple : 2004.03.06


散文(批評随筆小説等) 「タガタメ」 〜皮肉たっぷりのニュースが見たい Copyright クリ 2004-03-07 03:26:56
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