帰省
こしごえ
眠る肢体の硝子の呼吸に
空の落下を錯覚する
心音の宙に浮いてきそうな静けさに
めまいしてうつむく不意なかたちで
水性のからだへと溶けそうで
うわ言をもらすあなたの手に
ドライフラワーを一輪そえた
過ぎ去った
果実の味は
いつまでもたどりつけない
零れるだろう涙
のしんわりと広がる
縁の無い波紋
あぁ
我にかえれば
夜空に生っている
満月に照らされた
淡い影が
ほそく口遊む歌の
暗闇へ重なってゆく微かな熱が
わたしの肺に響いてくる
ひとり
ひとり
ひとりだった
あなたも
この手に帰ってすっ と息をするドライフラワー