帰省
こしごえ

眠る肢体の硝子の呼吸に
空の落下を錯覚する
心音の宙に浮いてきそうな静けさに
めまいしてうつむく不意なかたちで
水性のからだへと溶けそうで
うわ言をもらすあなたの手に
ドライフラワーを一輪そえた

過ぎ去った
果実の味は
いつまでもたどりつけない
零れるだろう涙
のしんわりと広がる
ふちの無い波紋
あぁ
我にかえれば
夜空に生っている
満月に照らされた
うすい影が
ほそく口遊くちずさむ歌の
暗闇へ重なってゆく微かな熱が
わたしの肺に響いてくる
ひとり
ひとり
ひとりだった
あなたも

この手に帰ってすっ と息をするドライフラワー








自由詩 帰省 Copyright こしごえ 2006-08-25 10:41:14
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