発声
たもつ
お花畑のようなものでできた駅に
列車が到着して
たくさんの乗客が降りてくる
小さなホームはやがて人で溢れかえり
それでも乗客は降り続ける
もう車内に
人っ子一人残っていないというのに
もちろん夢の中の話にちがいないのだが
誰が見ている夢かわからないので
いつまでも人は降り続けるしかないのだ
列車が溶けてだして
ナマコみたいなものになると
ようやくどこか遠くの方から
夏に生きる虫たちの
発声が聞こえ始める
自由詩
発声
Copyright
たもつ
2006-08-24 16:55:56
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