祈りを土に
千波 一也

祈りを土に捧げましょう

記憶は
ひと知れず育ってゆきますから
たくさんの道で迷えるように
そのぶんしっかり
戻れるように


空を翔ける翼のない者たちは
すべての責任を
空に負わせる夢に焦がれます
けれどもそれは
はじめから
悲恋でありますので
この手と足と
ほどよく疎遠な土にこそ
日記を預けてみませんか


気が向いたならいつだって
四季の温度をすぐそこに
かよわい手のひらで
確かめることがかなうように
過ぎ去った総ては
思いのほかに思うがまま、です


祈りを土に捧げましょう

空ではなく
星ではなく
海でもなく
時計はもっと身近なところへ


ひと知れず育ちゆくものを
ひと知れず守りゆくため

祈りを土に捧げましょう



自由詩 祈りを土に Copyright 千波 一也 2006-08-23 13:11:52
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