探しもの 
服部 剛

うたたねをして目覚めると 
一瞬 黄金色こがねいろのかぶと虫が
木目の卓上を這っていった 

数日前
夕食を共にした友と 
かぶと虫の話をしていた 

「 かぶと虫を探さなくなったのはいつからか 
  大人にとってのかぶと虫とは、なんなのか 」

それからというもの
黄金色のかぶと虫は
日常のあちらこちらに一瞬現れては 
足早に這い、何処かに消えていった 

鏡に映る
くたびれた大人の僕の中から 
麦わら帽子をかぶり、
虫取り網を手にした半ズボンの少年が抜け出して 
よどんだ煙の渦巻く明日へ 
無邪気にも 
駆け出していった 





自由詩 探しもの  Copyright 服部 剛 2006-08-22 23:32:18
notebook Home 戻る