詩人の葬式
馬野ミキ

もし俺が死んだら、世界中の人に祝ってもらいたい
詩人が故郷に無事帰れたのだと祝杯をあげてほしい

生まれた時と同じように
また、
生まれるのだ。

深夜二時にコマ劇場前でロケット花火を
家のない若者が悪魔に魅せられたように全てのベンツのエンブレムをスペードのエースで、
乞食たちはジャングルジムの天辺で手旗信号を振る
彼らは自分たちの詩集が一冊も売れなかったとを月に伝えるだろう
ダウン症の奴らは真夜中に抜け出してこい
手や足のないものが108人集まったら
ブリキの太鼓を叩きながら歌舞伎町から新大久保までパレードがはじまる
猫の死体 
酔っ払いのげろ
中身が抜き取れらた財布
路地裏には詩が溢れている
そして誰もが目をそむける
立ちんぼは目一杯に着飾る
皆世界一綺麗だ

レセプション会場では健常者たちが
名刺を交換したりしながら
ノストラダムスの預言についてだとか、誰と誰が離婚したかだとか
或いは現代詩の展望についてだとか
兎に角唇に泡を貯めてくっちゃべっている
彼らの歯と歯の隙間には誰しも平等に、よだれで包まれた肉やチーズのカスが詰まっている
そして今宵もまた新しい恋が生まれる
ロミオとジュリエットたち つまり、肉やカスの恋が。
ふり注ぐ星と、祝福しておくれ
やっとこの星とオサラバできるんだ、


自由詩 詩人の葬式 Copyright 馬野ミキ 2004-03-06 19:08:13
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