「コンビ二の猫」
はなびーる
真夜中のコンビ二エンスストアに
いそいで駆けこんだら
あたたかい、垢じみた
猫の毛の匂いがした
うす茶色の肌とうす茶色の目をした
店員の青年がこちらを見ていた
鮭のおにぎりを手に取ったら
「それはもうすぐ賞味期限切れだから
こっちのがいいよ」
とウィンクをした
別のおにぎりを持ってレジに行ったら
猫の匂いは、青年そのものの匂いだった
「漁師町に棲むのら猫だったら
こんなに苦労しないのにね」
猫はするりと、耳元でささやいた
(猫は賞味期限切れのおにぎりを
内緒で持って帰るのかしら)
彼によると真夜中のコンビニ店員の
4割は猫らしい
だから彼らの動きは
あんなにも静かで滑らかなのか
真夜中のコンビニエンスストアには
あたたかい、垢じみた匂いの
優しい目をした猫がいる
夜の街角で見かけなくなったと思ったら
猫には猫の
いろんな事情があるようだ
(2006年8月)