「コンビ二の猫」
はなびーる


真夜中のコンビ二エンスストアに
いそいで駆けこんだら
あたたかい、垢じみた
猫の毛の匂いがした
うす茶色の肌とうす茶色の目をした
店員の青年がこちらを見ていた

鮭のおにぎりを手に取ったら
「それはもうすぐ賞味期限切れだから
 こっちのがいいよ」
とウィンクをした
別のおにぎりを持ってレジに行ったら
猫の匂いは、青年そのものの匂いだった

「漁師町に棲むのら猫だったら
 こんなに苦労しないのにね」
猫はするりと、耳元でささやいた

     (猫は賞味期限切れのおにぎりを
       内緒で持って帰るのかしら)

彼によると真夜中のコンビニ店員の
4割は猫らしい
だから彼らの動きは
あんなにも静かで滑らかなのか

真夜中のコンビニエンスストアには
あたたかい、垢じみた匂いの
優しい目をした猫がいる
夜の街角で見かけなくなったと思ったら
猫には猫の
いろんな事情があるようだ


         (2006年8月)


自由詩 「コンビ二の猫」 Copyright はなびーる 2006-08-22 12:52:54
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