晴天
あおば

自動販売機のなかには
シーラカンスを気取るのが居て
夜になると
腹びれを振るわせて
反対側の中州に登り
ニイタカヤマノボレと
大きな顔して
電話して
スクワットする夜間割引券と
交換する手続きが
台風を誘惑して
道路も中州を残し
すべては水の底に
隠れた

顔を隠した
シーラカンス
顔を隠した怪人
20面相の芸人
探偵小説のなかの
シーラカンスを気取る
顔を隠した大物巨人が
のっしのっしと歩く世間
自動販売機のなかに押し込められた
シーラカンスの群れが中州に押し寄せて
洪水を待ちわびる台風予報の信頼性が
人々を災害から守り
シーラカンスを守り
がんじがらめになった
道路渋滞情報を独り占めにして
道路の真ん中にある
乾いた中州のなかでは
シーラカンスを気取った男が
地権者を装って
大型の乗用車を止めて
駐車違反の警告を無視して
いつまでも停車している
停車と駐車の定義は明確なのだが
道路渋滞情報が一人歩きするのは
あまりにも危険なので
シーラカンス化された中州のなかでは
フラダンスを踊るふりして
腹びれをバタバタさせながら
夜の来るのを待ち続け
夜が来たら
河のなかに
どぶんと飛び込んで
魚のなかに潜り込んで
尾びれを振って
河口に下り
ケータイ電話のアンテナを立てて
台風予報を確認するのが
日課となっている
シーラカンスのような
毎日が
台風のように襲ってくるから
道路の真ん中にある
地権者を装った
中州のなかでは
大型乗用車の群れが
腹びれを振るわして
フラダンスを踊るように
駐車している
停車している
ように
動こうともしない
状態が
毎日が続いている
シーラカンス化された
洪水のような道路渋滞を
横目で見ながら
生まれたまんまのシーラカンスが
スキップしながら
道路の中州を
地権者を装わないで
飛び越してゆく
よく晴れた日の
非日常的な
道路渋滞状況


未詩・独白 晴天 Copyright あおば 2006-08-18 06:16:05
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