熱帯夜
落合朱美
人目をはばかりながら夜は
汗ばんだ首筋に歯をたてる
梳いた黒髪をかきあげて
受け入れてしまった恥辱
かつて少女の頃に見た
甘美な夢とはほど遠い
なんの形も示さないのに
耳もとで囁かれる愛の断片
夜は短いほどに人を
惑わすにはじゅうぶんな熱を帯び
理性はそっと闇に寄り添い
やさしい色の牙を剥く
自由詩
熱帯夜
Copyright
落合朱美
2006-08-17 23:38:22
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