デジャブー
ajisai
僕は夢を見た
僕は海の中にいた
でも不思議と苦しくなくて
自由にそこを泳ぎまわっていた
花のように美しい珊瑚の中を抜け
カラフルな魚たちと一緒に楽しく泳ぐ
いるかの群れがやってきた
僕はいるかにつかまって
くるくると回りながらダンスを楽しんだ
暗い岩場の影にいくと
大きくてきれいに光る魚の尾が見えた
岩場の影から出てきたのは
まさしく人魚
この世のものとは思えない美しさ
僕の目は彼女に釘付けになった
彼女はにっこりと僕に向かって微笑むと
向こうへ泳いでいってしまった
僕は追いかけるのも忘れて
ただ彼女を呆然と見つめていた
気がつくといつもの見慣れた僕の家の天井
素敵な夢の余韻でぼんやりとしたまま
身支度をし食事をして家を出る
いつものように通勤電車に乗り込む
電車を降り会社への通勤路を急ぐ
向こう側から歩いてきた女性
僕は呆然と立ちすくんだ
今朝夢に見た人魚!
彼女は微かに笑みを浮かべ僕の横を通り過ぎて行った
僕は言葉も出ないままに彼女の後姿を見送っていた