懶 惰
塔野夏子

浅い午睡に
思いがけず野蛮な夢をみる
それを誰かのせいにしてみたところで仕方ない
けれど

ああ
夏が甘く爛れる匂いがする
それは私の倦怠と
なまぬるく混ざりあってゆく

何もかも煩しいのだ
何もかも溶け出して
流れてしまえばいいのだ

何処へも行きたくないし
何もしたくない
ああ
夏がみるみる形を失くしてゆく
とめどなく傾き頽れてゆく

甘く爛れる匂いは
まるで私の身体から立ちのぼるようで

浅い午睡に
思いがけず野蛮な夢をみる
それが貴方のせいだとしたら
あまりにもありふれていて
わらってしまう

    裏庭では
    羽黒蜻蛉が
    音もなく羽を開閉する気配――





自由詩 懶 惰 Copyright 塔野夏子 2006-08-11 23:12:11
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