吹き抜け
霜天

吹き抜けのある町に生まれた
回り階段を何度か抜けると
大切なものが床に散らばっているのが見える

高い天井はどうやって作ったのだろう
昨日は知りたかったことが
今日には通り過ぎている
支えている手には何割かの嘘も含んで

疲れた顔の人たちが
今は草原を帰る途中で
珍しくシマウマが通ったことにも
誰も気付いていない
広く光の届く場所
階下で眠る息遣いが聞こえて
手摺りはいつの間にか消えかけている


吹き抜けのある町に生まれたかった、と
隣町に住む君が漏らした
そんなに良いものでもないよと
回り階段に慣れない体で答える
明日には部屋を片付けようと
広すぎる視界を、ゆっくりと閉じる


自由詩 吹き抜け Copyright 霜天 2006-08-08 00:21:31
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