祭囃子に誘われて
佐野権太

朝顔の 浴衣着せられ すましても
囃子はやしの誘いに 鳥のはばたき

色具合 綺麗じゃないかと なだめても
姉のお古に チョーさん唇

何故わかる 金魚の匂い ぐいぐいと
群れを突き刺す 手の引く強さ

すくえずに 半分破けて 涙顔
どれ、貸してみろと 腕をまくれど

白熱球に 頬も瞳も 輝いて
おまけの金魚 かざす透明

そういえば 行方知れずの 妻、問えば
子の差す先に 「なま」の行列 (おぃっ)

輪に交じり 手足そぞろの 帯姿
残りの夏の 幾年月か

やぐらから ふわり獅子舞 二本足
下がり隠れる 八の字の眉

常夜灯 薄掛け抱いて ちちまいくる?
来ないよ、来ても やっつけてやる

残せしは ラムネの底の 一滴ひとしずく
幼き寝顔の 頬をみつめる
           

            (ちりーん・・・)


短歌 祭囃子に誘われて Copyright 佐野権太 2006-08-07 09:51:57
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