寡黙な霊前
こしごえ

あわく光の閉じられた
空のもとを
一羽の紋白蝶が舞っていた
しばしそれは
重い熱風のあわいを
ちらりちらりと映えて
切れ切れに風を読んでいたが
霊園の奥深くへ とけていった

さて
繁雨しばあめ 去った私は、といえば
待ち遠しくも
心細い呼吸の果てへ
まろやかな風に揺れる日々を
願いつつ
月明りに浮かんだ
こういうところを散歩しながら
物思いに耽る
という真夜中があった
この向こうの林の花で 暗唱するシンメトリー

いつかの視線が
あざやかな花びらに染まる しっとりと
青空を夢みる
白いからだの
暗い頭蓋とうがいのうちで鱗粉が零れて
乱層雲は開かれ真新しい星座を灯す
いつまでも
始点のない輪を描く
微笑する羽音
影も無くすべる波紋








自由詩 寡黙な霊前 Copyright こしごえ 2006-08-06 14:12:30
notebook Home 戻る