定休日
よーかん

曜日とかそういうのを
思い出すのが苦手なのは
何もボクの頭が弱いからとか
そういう理由ではないとは思うけど

つまり弱いとか遅いとかいうんではなくて
ただ単に曜日を覚えておくとかそういう必然性・・・

必然性だって

そんな言葉で話すわけない

必然性とか使う時
ボクの頭はウソをついてる

ボクがよく行く喫茶店は閉まってた

定休日だからたぶん月曜か火曜日

喫茶店の定休日なんて覚えていない

たぶん月曜日だ
でももしかしたら火曜日かも

よく行くといっても
週に一二度、
月に数回。

ドトールが毎日だから

喫茶店だと420
ドトールだと230

これって大きな違いだよ

だよだって
だよって使うとき
ボクは誰かに媚びている

そうだ黒い猫だ
階段の上に黒い猫が座っていたんだ

仕事帰り
少しゆっくり座りたくなって
久しぶりに喫茶店に寄りたくなった

バーとかスナックとか
そういうのに行けないのが
ボクのボクたるゆえんかも

バーとかスナックとか
まあ居酒屋なら行けるけど

バードとかスナックとかに入って
ゆっくり
ただゆっくりと座ってられる
そんなオトコなら
ボクはボクと書かないで
オレと書いて
オレはオレと言い切ってる

オレの人生さ
みたいな感じで

なんだっけ

黒い猫だ

黒い猫が階段の上に座っていたんだ

猫は座らないか。
いや座るか。

その黒い猫は階段の上に横たわっていた

細い階段

台湾マッサージの店に伸びてる
オトコ一人がやっと通れる
手摺り付きの細い階段

まだ夕方で
まだ人通りが多くて

駅裏の
ちょうど本屋の裏の
通りの角の台湾マッサージの階段の

最上段って言うのかな

階段の一番上で黒い猫は寝そべっていた

ずっと下を眺めてたのか
それともボクが見上げた瞬間
黒い猫もこっちをみたのか

緑色の眼をしていた

緑色の眼でこっちを見て
緑色の眼でボクを見て
太い尻尾をユックリと二度

ユラリユラリと
ユックリと二度

喫茶店が閉まっていたから
ぼくはドトールにもどろうとしてた

ウェストが細くて肌が透明な
制服が似合うあの店員が
いたらいいなと期待しながら

曜日とか覚えないのはそのせいかもしれない
曜日とか覚えると楽しみが消える

いるかな
いないかなとか

予定どおりのことばかりだし

スケジュールどおりのことばかりだから
曜日とか覚えると期待がなくなる

あの店員いないかな
そんな期待で十分なんだ

黒い猫はそこに寝そべって
ボクを階段から見下ろして

アクビをするわけでもなく
瞬きをするわけでもなく

何かをはぐらかす
そんな仕草をみせないで

尻尾を二度揺らして
ボクを見つめた

ボクは夕日に照らされた駅裏の
本屋の裏の台湾マサージの階段の下で

黒い猫を見上げて
こう思ってた

黒い猫って
黒い猫だな

黒い猫って
黒い猫なんだな

給料前だったし
まだ人通りも多かったし









自由詩 定休日 Copyright よーかん 2006-08-06 13:09:49
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