サティスファイ ミィ
さくらほ

わたしは
夏を追いかけて
川辺に花火を見に来たはずなのに
自分を満たしに来た事に気づいた



 父は昔
 子供と出かけるより
 自分のお店で働く事に熱心だった。
 うちのカレンダーには
 青も赤もなかった。
 けれど夏になると
 大きな大きな花火を
 爆音で咲く花火を
 見せに連れて行ってくれた。

 この日だけは
 早くお店を閉めて
 車に乗って家族で出かける。

 いいポイントを見つけて
 車を停めて
 ダンボールやら
 新聞紙を敷いて
 わたしたちは
 見知らぬ人たちと
 肩を並べて
 花火を見る。

 家族は四人なのに
 父はいつもうちわを
 それ以上に用意して。
 母は家にあったおかきや飴を
 レジ袋につっこんで。

 花火が終わると
 渋滞にあい
 途中
 一号線沿いのお店で夕飯を食べる。

 私の中の
 家族の
 数少ない夏の思い出。




夏の夜空は
色鮮やかに
祭りとなって
私を満々に満たす

その艶やかさと
その儚さと
その思い出で


私の中の花火は
8ミリフィルムのように
ちょっとだけ
古くさくて
ちょっとだけ
おかしくてあったかい


夏の夜空に思い出は咲く


自由詩 サティスファイ ミィ Copyright さくらほ 2006-08-03 21:31:55縦
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