エオリア
モーヌ。
エオリアンハープの 響きと色が 乾いた
白砂の フィールドを 打ちひらいて いった
旗になってしまった 白いシャツを なびかせて
少年や 少女が まだ 薄着の夢を 着たまま
砂塵のような 丘や 浜辺や 灰の街へと
飛びだして いった
とうめいな 風船が はじかれて あがり
すきとおった 歓声が はじかれて あがり
放茫として いった... 風と 旗と
空や 風野の 呼びかけは
呼びぬかれた はるかな親愛の 籠もった
名まえのような 響きが あふれ
少年や 少女の からだは
いっぱいの 太陽と 立ちのぼる かげろうと
透色の ひかりの 火柱を 踊っていた
さやかに 見えない 輪違いの 波紋が
かわる がわる 自然なふうに はじかれてゆき
ただ それぞれという 存在だけを 持って
ぎくしゃくと 自然なふうに さびしい こころに
無数に 分かれて さししめされている
まひるの 色彩を 降りおりていった
ほつれて 解けてゆく 光束のつぶやきは
むくわれなくても 祝福されなくても
やはらかな 下降を やめなかった
ひそやかで そこはかとない 朝の小鳥が
見たことのない 恋びとの面影のように
眼をさます しじまに 眼ざめ 見つめていた