夕焼けの街
結城 森士

真夏の一本道は何処までも続く
と思っていたのに気づくと僕は
廃墟の街で佇んでいた


強烈な西日を受けながら
僕は少年の影を追いかける
街が暖かく流れていき

ランドセルを地面に置いて
仰向けに寝転がった黒猫と戯れる様をご覧よ
少年の隣には赤いランドセルと、
チリンチリン・・・

現れては消えていく
少女の笑顔


赤い一本道を淡い光に包まれて
僕は少年の影を追いかける
過ぎ去っていった暖かい季節に

仄暗い白電燈に照らされて
ぼんやりと道を歩く姿をご覧よ
夜道に立ち並ぶ蛍光灯は、
ポツポツ・・・

俯いた瞼から、透明な水滴


陽の当たる窓際の席にうとうとしながら
僕は少年の影を追いかける
青空はくるくる回っている

追憶の教室に
少女の笑い声が響いている
顔を上げると、
(誰も居ない)

赤い日差しが放課後の教室に差し込んでいる
僕はもう帰らなくては


友達と一緒に
アパートの屋上から
太陽に燃えている街を見ていた
ランドセルを放り投げて
二人で黙り込んだあの日
夕焼けの雨が、
ポツ、ポツ、・・・

友達の目から
夕焼けの雨が 
(先生、あの子を傷つけたのは、僕です)


赤い炎が闇に変わってしまう前に
僕は少年の影を追いかける
一本道は強烈な西日で

僕は追いかける
少年の影は廃墟の街に止まり
追いつくと、消えていた
ああ彼は今、僕になった


真夏の一本道は何処までも続く
と思っていたのに、灰色の街が
赤く染まっている


自由詩 夕焼けの街 Copyright 結城 森士 2006-08-02 20:00:05
notebook Home 戻る