メモリーカード
いとう





私たちは一葉の記憶装置だ
生い茂る木々の端で
保存することのうしろめたさを
知りながら連なっている

陽光が差すその瞬間に
私たちはいつも照れている
風の戯れに私たちは
くすぐったがり
疎ましがったり
ときには揺られながら
朽ちてゆく様に思いを馳せる

夜の私たちはとても忙しい
見えないものと
見えないことに怯えながら
ありのままをありのままに
捉えようとして失敗する
唇を噛む記憶だけが
保存されていく

葉脈と
不確かな茎を通して
私たちはつながっている
思い出を産み、浸り、
溺れていく姿を
私たちは共有する

保存することに疲れると
後を託し
自らを切り離す
形だけが朽ち
その他のすべてのものは
受け継がれていく






未詩・独白 メモリーカード Copyright いとう 2004-03-03 00:52:39
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