夜へ夜へ(朝へ)
木立 悟




蝶の花 蝶の花
土の下へ
飛び去りゆく輪
蝶の花


塩の火 塩の火
燃えつきぬ糸
人の色でなく
向かうものはなく


甘いにおいは風に消え
ただふるえだけが降りつもる
点滅する灯のあたたかさ
行き止まりの灯のあたたかさ


暗さ 明るさ
ふたつの境いめ
ふたつの差異しかないところ
小さな行方の着くところ


ひらいては閉じる
手のひらの列
風にとどかぬあたたかさ
背に打ち寄せるあたたかさ


身をかがめた水のしみ
壁の何かを指している
宙に崩れぬかたちから
光はまるく鳴り響く



花を乗せたふたつの頭
うたの曲がり角をすぎてゆく
夏は三つともうひとつ
まぶしいものを転がしてゆく












自由詩 夜へ夜へ(朝へ) Copyright 木立 悟 2006-07-31 17:50:18
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