どうしようもないくらいに哀しい夕焼けのうかぶ空
atsuchan69

誰にも変えられない、
 どうしようもないくらいに哀しい
夕焼けのうかぶ空だ

巨大な軍艦みたいな工場を出ると、
 街はたそがれ
百円均一の人だかりも
赤く染まっている

ネオンと張り紙広告、
そしてあちこち捨て看板だらけのこの街だって
住めば都、
マンザラでもないさ

焼き鳥のけむりのただよう雑踏のなか
 殺伐とした本能、
獣じみた
飢えを呼び起こす
あの香ばしい匂いのなかを、
ひとりの老婆が
買い物カートを押しつづけている

非合法な日常が闊歩する道を
様々な流行や肌と肌、
アクセサリーが通り過ぎてゆく
そして人の心を擽るような香水の匂い、
うつくしい女たちが
いやしい街の匂いに混じって点在した

ソフトクリームだの
蛸焼きだの
コロッケだの
音楽だの
濁声だの
 カレコレそれが
もう何十年も続いている

僕は吟遊詩人
 汗も疲れも日々のパンのためじゃない
風を感じて
耳に届かぬ声を聴き、
君を知り、
また別の顔の君を知り
 「サヨナラ」
その一瞬を
あえて傷つけるように刻み、
切りきざんだ日々よ!

ああ、その痛みはねぇ、
きっと僕のと同じさ
 僕のと同じ

そして誰にも変えられない
誰にも変えられないこの世界が、
手を変え品を変えながら
さりとて住めば都、
カレコレそれがもう何十年も続いている

ページを捲ると、
時代が吹き過ぎてゆく
大風のなかを君が立っている
戦車の走る道に、
嵐の夜に、
昨日もその前の日も、
明日も明後日も、
君は洋服の柄も変わらずにじっと立っている
 裏切りや
殺戮の果てに残された夕焼けが
いつもより、
一層映えて見えた

君の美しさは、その罪と等しく
死もまたその罪と等しく、
 「サヨナラ」
その一瞬を、
大切な君をナイフで傷つけるように刻んだ日々よ!

誰にも変えられない、
どうしようもないくらいに哀しい夕焼けのうかぶ空が
今日もいつかの日と同じように
勝手に暮れてゆくけど
 「サヨナラ」
死ぬまで その繰り返しなのかな?

街はたそがれ、
今日も雑踏のなかを
 ひとりの老婆が
買い物カートを押しつづけている


自由詩 どうしようもないくらいに哀しい夕焼けのうかぶ空 Copyright atsuchan69 2006-07-31 01:54:54
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