君に会いに行くために海へ行く
海月

海の方へと走らす車の中
僕は何を考えて運転しているのだろう
自分に質問しても何も答えは出ず
アクセルを踏む足に力を入れた

優しさなんて口先だけ
と、思えてしまう
信じる程に失望は大きくなり
君の事を想う程に浮雲に月は隠れ
微かな光が高速度道路を照らすだけ

暗闇の海は静寂すぎて
砂の様に僕も飲み込まれる
砂と水の境目さえも見えず
歩みすぎて浸かる水の冷たさ
心の奥底に染み渡り
遠い記憶を呼び起こす

月夜の灯りを受けて
細く長く伸びる僕の影
足跡は波が浚い
浚いきれずに僕が残る
影は波の上を漂う
片思いの夢の欠片

幸福の定義は何処にもなく
それでも僕は探してしまい
君の粉を帰した海へ来てしまったのだろう
励まして欲しかった・・・
愛して欲しかった・・・
本当に微かな希望を抱いて
海水を掴み手から滑り落ちた

助手席に寝転がり見上げた
月の輝きの切なさ
君の最後の微笑みに似ていた気がして
僕は忘れるべき君の事を思い出した
ラジオのチューナーを廻して聴こえる曲
最初で最後のラブソング
お互い歳を取っても傍にいられる
と、うろ覚えの詞を独りで口ずさむ

夜空を一途に流れ星は落ちた
帰るべき所へと君は向かったのだろう
言い聞かすのは自分自身
曲は終わりを告げて
ラジオからは砂嵐の音が響くだけ・・・
あ・・・り・・が・・とう・・
と、砂嵐から聞こえた気がした
それは君なのだろうか
それとも僕が呟いただけなのか
その答えは今も解らずにぼくは家路を辿る




自由詩 君に会いに行くために海へ行く Copyright 海月 2006-07-30 23:02:38
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