「遠くの方で燃えている」
麒麟

 あの子の瞳は遠くの方を見つめていた
 見つめ合ってはいたけれど
 その黒は、星が流れる広大な虚空よりも深く
 氷に閉じ込められたまま、燃え上がるような黒だった…

その炎に触れてしまったら
凍りついてしまうのだろうか?
僕はいつもの気付かない振りで
生温い口づけを交わした

 触れているのに遠くにある
 どこへ行く
 いつか帰ってしまうのかな
 ここは…

あの子がカーテンを一気に開けると
部屋に残った夜が裂かれてしまう
朝の光を仰ぐあの子の
輪郭だけが浮かび上がった


自由詩 「遠くの方で燃えている」 Copyright 麒麟 2006-07-30 03:24:14
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