ほおずき
かおり



ほおずきの
鉢植えをもらった。
育てたことなどないけれど、
そんな夏も
いいかな と思った。

一緒にもらった
朱い風鈴は
ベランダ側の窓。

 チリン カラン
  カララン チリリン

懐かしい音がして。

  あのとき、
  あのひと は
  まるで他人事のように
  あんなこと を 言った。

  あのこ は
  まるで
  自分のことのように涙をためて、
  そんなこと も 言っていたっけ。

  あかあさん の
  あのひとこと は
  ほんの少し
  わたしを傷つけた。


ほおずきは
下の方にある実から
朱くなってゆく。

朝に晩に
たっぷりの水をやらなければ
すぐに
しおれてゆく。

ベランダの
遠くにある 街ばかり
ずっと遥かの空ばかり
気づけば 後ろばかり
見つめていたのに

いまは
足元のほおずきが、大切。

いちばん上にある
蒼い実が
朱く染まるのはいつなんだろう。

夏は
まだ 始まったばかりだ。





自由詩 ほおずき Copyright かおり 2006-07-30 01:28:38
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