せかいというビンのなかにふる雨
光冨郁也

せかい、というビンのなかに雨がふります。
あおくとうめいな悲しみが、
ガラスの内がわにすいてきとなって、
したたっていきます。

ビンのなかでも、
そらは、どこまでもはてがないようで、
でも、ちきゅうを一周して、
わたしの背なかから、
こえをかけていきます。

(雨はおすきですか

せかい、というビンのなかに雨がふります。
あまおとは、
子をあやすように、
乾いたちじょうをうるおしていきます。

よるがきて、
雨だれのおとに眠り、
あさもやのなか目をさまし、
雨があがると、
小鳥のさえずりで、
さびしさが、かすかな虹にかわりました。

もし、わたしがいなくなったとしても、
せかい、というビンのなかでは、
こどくがちいさな結晶となって光っています。


自由詩 せかいというビンのなかにふる雨 Copyright 光冨郁也 2006-07-27 22:10:35
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