「 みごみ。 」
PULL.







ごみ袋を引きずって、
外に出る。
家の外に出るのは、
三日ぶりだ。

ずるずると、
アスファルトの上を、
引きずって運ぶ。

集積所の周りでは、
ごみを狙うカラスの群れが、
我が物顔で待ちかまえていた。
「ごあごあぁ。」
カラスは威嚇するように、
向かって啼いてくる。

構わず、
群れの中を横切る。
無視されたカラスが、
その抗議のためか、
鋭く尖った嘴で、
足を突く。
何度も何度も何度も、
激しく突かれて、
肉が抉れた。
構わず、
進む。
無視されたカラスは、
標的をごみ袋に移した。
柔らかい袋は、
たちまち破れて、
ずたずたになった。

カラスは勝ち誇ったように、
「ごぁぁあ。」
啼き、
抉り啄み、
引きずり出す。

破れた所から、
袋の中身が溢れる。
アスファルトが濡れて、
臭いが漂う。

臭いを嗅ぎ付け、
カラスは更に集まり、
嘴と足で、
ぐいぐいと、
ごみ袋を引っ張り、
漁る。

手を離した。

これ幸いとカラスが、
ごみ袋に群がる。
瞬く間に、
そこは黒く、
覆い尽くされた。

振り返ると、
ごみ袋を引きずった痕が、
いびつな線となって、
家まで続いていた。

カラスは、
いよいよ激しく、
ごみ袋を啄み。
黒い羽根の塊が、
まるで咀嚼するように、
蠢いている。

頭上では、
はらわたの雲が、
低く垂れ籠め。

もうすぐ、
また雨が降る。

雨が降れば、
痕は洗い流される。

わたしが犯した罪も、
そうやって痕形もなく、
洗い流される、
だろうか。

ごみ袋を啄む、
カラスの啼き声が、
遠く、




「ごあごぁぁあ。」












           了。



自由詩 「 みごみ。 」 Copyright PULL. 2006-07-27 17:08:06
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