祝福
霜天
「輪郭はね、大きすぎない方がいいと思うんだ。
両手を、こう。ゆらりと、一杯に広げたくらいの」
朝の電車は
どこかに海の匂いが紛れている
だから皆、溺れたような顔になって
いつも、何かにつかまろうと思いつめている
息継ぎは
何も混ざらないリズム
空を区切る線を越えて
君たちは
泳いで
夜と朝の境目が見える
張り巡らされた線の、一つひとつ
躓きながら繰り返す
眠りごとに
目覚めごとに
そんな、痛むことも忘れて
削られていくような、夏の
まだ残されている自由帳
まっしろなページを汚すたびに
輪郭が段々ぼやけていくような
呼吸を
その分だけ
隣の誰かが混ざっていくように
息継ぎをする
呼吸をする
心音が膨れて
広げた両手から、君が送信されていく
吐息は
祝福
君の境界がいつか
空に重なるまで