果実の名前
塔野夏子

夜明けの窓は孔雀色
今年もまたうたうように
アガパンサスが咲いている

七月はわたしの中で
いちばん甘く実る果実
君はいつかそれを 別の名前で
呼んだかもしれない

少しずつ風がうごきはじめると
あの汀への道をおもいだす
あのとき交わした言葉たちは
かたちのない傷を内包した
やわらかな立体星座となり
いまもなかぞらでまわっている

告げたいことはいまも
そこからさざめくように零れてくる
孔雀色の夜明けの窓の向こうに
うたうようにアガパンサスの花は咲き

あのときから
七月はわたしの中で
いちばんうるわしく実る果実
君はいつかそれを 別の名前で
呼ぶのかもしれない
あの汀への道を
またふたたび辿るならば





自由詩 果実の名前 Copyright 塔野夏子 2006-07-23 18:19:10
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