白い 足跡
砂木

遠い朝 日に乗るように
長靴が 畑の真ん中に立っています

沈んでいく桃色の光が 靴底で
何人かの村人に 似ていきます

ひそりと ゆえに おもむろに かぜ

駆け出しそうな 針葉樹の群れの中
パイプをくわえた 
とうもろこし畑の てるてるハングライダー
もう 飛ぶ気はありません
でも 雲に 届きたくて

背中を押したのは 
逃げ遅れた 小さな白い花
とどめるためだけに
痛がらない 屑

ひとりと ひらり ほしのよに かぜ

いくつもの黒は 曲がって飛び降り
土地の上に止まってしまった長靴に
続きの子守り歌を ねだるのでした

誰かの足が今だけ 玄関に入ります
明りがつきました
何人かの村人の声が
静かになっていきます

先に眠ったのは 照らしたくない月でした
いつかの雨を 溜め込んだまま

長靴が畑の真ん中に 立っています 





自由詩 白い 足跡 Copyright 砂木 2006-07-22 22:49:02
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