白い 足跡
砂木
遠い朝 日に乗るように
長靴が 畑の真ん中に立っています
沈んでいく桃色の光が 靴底で
何人かの村人に 似ていきます
ひそりと ゆえに おもむろに かぜ
駆け出しそうな 針葉樹の群れの中
パイプをくわえた
とうもろこし畑の てるてるハングライダー
もう 飛ぶ気はありません
でも 雲に 届きたくて
背中を押したのは
逃げ遅れた 小さな白い花
とどめるためだけに
痛がらない 屑
ひとりと ひらり ほしのよに かぜ
いくつもの黒は 曲がって飛び降り
土地の上に止まってしまった長靴に
続きの子守り歌を ねだるのでした
誰かの足が今だけ 玄関に入ります
明りがつきました
何人かの村人の声が
静かになっていきます
先に眠ったのは 照らしたくない月でした
いつかの雨を 溜め込んだまま
長靴が畑の真ん中に 立っています