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狩心

一年前から国会議事堂の周辺にマンホールが増えた
河童が不発弾を持って国会議事堂の前に現れた
その数は日に日に増えるばかりで
警察も自衛隊も在日アメリカ軍も手が出せるような代物ではなかった
日本中がテレビに釘付けになった
物が物だけに危険なので現地で見物しようなんていう好き者は少数派だった
河童と不発弾の数が5000くらいを過ぎた頃に
東京から人間の姿が消えた
国連の決議で東京ごと爆撃する事になったのだ

作戦決行3時間前の国会議事堂周辺の衛星写真を見て
国連軍のお偉方は自分達の目を疑った
河童と不発弾の数が数十倍にもなっているのだ
こんな場所を爆撃したら地球が死んでしまう、と老人が叫んだ
和平を結ぶしかない・・・しかし、河童には言葉が通じなかった
人間達は、増殖していく河童と不発弾をただボーっと見守る事しかできなかった

時は過ぎ、世界中の陸地が河童と不発弾で埋め尽くされた
人々には逃げる場所も無く、選ぶ権利も無く、不発弾と不発弾の間に家を建て
不発弾と不発弾の間で生殖行為を行い、生きていくしか術は無かった

人々の苛立ちは頂点に達し、河童が1匹殺害され、不発弾が1つ起爆した
連鎖するようにして、他の不発弾も誘爆し、世界中は火の海となった


自由詩 企業 Copyright 狩心 2006-07-18 02:36:53
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