真夜中の海水浴
七尾きよし
泳ぎにいこう
真夜中の海へ
知ってしまったきみ
何年も
物心ついたころから
その肩に背負いつづけ
世界が広がれば
重みもひろがり
いつしか
道にうつぶせに
たおれていたきみ
知ってしまったきみ
解決方法など
無いということを
きみが苦しみを
抱え生きているという
現実があって
ぼくがこの先
身を滅ぼすことになる
邪悪な魂を宿しているという
現実があって
それ以上でも
それ以下でもない
ということを
ぼくはきみに電話する
「今から泳ぎに行こう
イルカになりたいよ」
時計は午後七時で
二人が砂浜にたどりついたのは
真夜中の十一時三十分
抱きしめあう
二つの裸体の
足跡が
海へと
つづく
イルカたちは
真夜中の
海へ