所在無い日
水在らあらあ



豊かなだけの想像力なんか俺はいらない
そう思いながら自転車専用の真っ赤な道を歩いていたら
後ろから
すけぼーで
いかついリーゼントのお姉さんが
ざっ
と通り過ぎた
首筋には漢字で
寿と
彫ってあった
しかも
「FUCKINほにゃらら」

そよ風に
置いていきやがった
留学生だろう きっと 英語圏からの
なぜか歩くペースが落ち
しかも自転車専用の道からはずれ
何がFUCKINなんだ
まあ
たぶん全部そうだろうと
俺から見たってそうだ
ちくしょう

すこしため息がでた
もうそしたら走って追いついて
リーゼント引っつかんで止めて
今日みたいな痛いぐらい晴れの日を
毒づきながら
ひまわりの種を食べ散らかして
刺青見せっこしたりて
一緒に過ごそうかとおもって
立ち止まって屈伸運動した
そのとき
角の
肉屋から
ビクトル

ずいっ
と登場した
いつもと変わらない
ふてくされたまあるい顔
しかし毛並みは今日も輝いている
そう

こいつトラみたいだけど猫です
途中で止まっていた屈伸運動をやめてそのまましゃがんで
ビクトル、ビクトル、プースプスプス ピースピスピス と
呼んでみると
ふてくされたまあるい顔でじーっとこっちを
見る

動かない
まあ
動いたためしがないが
ああ
いつもどおりだビクトルは
この街は平和だ
じゃあ今日はおまえと一緒にゴロゴロして過ごそう
この日当たりのいい肉屋の店先で
ゴロゴロ
のど鳴らして過ごそう
そう思って四つん這いになりかけた瞬間
ビクトルが
にゃーん
と鳴いて
歩き始めた
その先には
さっきのスケボーのお姉さんが
両手広げて
まぶしいくらいの笑顔で
まあ気持は分かるが
ビクトル
お前
ひどいじゃないか
あんまりじゃないか
がっかりだ
もう絶交だよ
しかし
お前を撫でようと
しゃがんだお姉さんの
ノーブラであるという事実が
お前のおかげではっきりと分かった
だから
ビクトル
今日のところは
勘弁してやらあ
また遊ぼうぜ
バイバイ

さて

今日は何をしよう





自由詩 所在無い日 Copyright 水在らあらあ 2006-07-16 22:53:39
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