沈む傍石
相馬四弦

地球の反対側まで透き通っている湖の

まるく晴れて しんと停まった水の中

ゆっくり沈んでいく 花火の残光のように

暗いビロウドの湖壁

極彩色の秒針がくるくる回って 螺旋を降りていく

沈んだ列車は乗客を揺らしながら

まだまだ沈んでいく

まばたきをしない牡鹿が

想いを語り尽くした石像が

飼い馴らされた木陰たちが

みんな沈んでいく

大地に寝そべることを

どうして罪悪だと思うだろう

こぼれてしまう小さな泡だけが

置き去りにされる


自由詩 沈む傍石 Copyright 相馬四弦 2006-07-16 18:10:09
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