月と獣
銀猫

雷鳴に少し怯えて
ようやく雨が遠ざかると
いつしか黄身色の月が
丸く夏の宵を告げる

湿度が首筋に貼りついて
ついさっき流れた汗を思う

狡猾な二本の腕を
互いの背に回して
策略の限りを尽くす

熟れていない果実には
甘すぎる果汁が隠されていて
不用意に噛めば
こころまで染みる

染み付いた果汁は
忘却を許さないのだ


月が見ている


僅かに獣の匂いが残るわたしを
口紅のすっかり取れた生々しい唇の獣を


月が見ている





自由詩 月と獣 Copyright 銀猫 2006-07-13 23:20:09
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